スマート農業とは?
農業の大規模化や高付加価値、省力化を目的として、ICT(情報通信技術)やロボット技術などの先端技術を活用した新たな農業のこと。日本における農業の現状は、人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、人手の確保や負担の軽減が重要な問題です。スマート農業は、そのような日本の農業における課題を解決する技術として今後の普及が期待されています。
いわみざわ地域ICT農業利活用研究会での取り組み
組織の強化活動
定期開催する役員会・総会のみならず、ICT機器導入者による意見交換会や先進地視察、行政・機械メーカーを交えた情報共有・意見交換を実施し、ICT農業の、より深く高度な情報・知識を共有し効果検証を行っています。
地域内外へ向けた普及啓発
道内外の公官庁並びに他地域JA・ICT研究会等への視察、TV番組や情報サイト・刊行誌等の取材対応、セミナーやHPによる会員向けの情報発信や対外向けのPRを行い、地域内外へ普及啓発活動を積極的に行っています。
ICT利活用向上支援技術の検討
①スマート農機の遠隔監視制御に関する技術実証
②センシング情報(センサー・ドローン・気象等)の取得・活用技術の検討
③省力化技術の導入に向けた活用技術の検討
以上を通して更なるICTの活用を支援しています。
これからのスマート農業
日本の農業における課題を解決する技術として重要なスマート農業。今後ますます普及することで、更に農業の魅力を高めるとともに、農業を通して持続可能な地域社会の形成が望めます。
協調型トラクター作業
GPS機器・自動操舵を搭載した有人のトラクターと無人トラクターが共同で作業を行います。
事例紹介
導入機材:RTK-GPS、GNSSガイダンス、自動操舵
技術紹介
RTK-GPSによる高精度測位情報並びに自動操舵による有人・無人トラクターの協調作業により作業幅の重複を軽減し作業時間短縮と作業人員削減が可能に。作業走行ラインの改善により、枕地での旋回切り返しによる土壌転圧による排水不良が減少しました。
利用者の声
岩見沢市栗沢町 道下 一記
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.機械オペレーターが2人居なくても、協調型トラクターを活用することで、1人のオペレーターでトラクターの2台同時作業ができ、作業時間の短縮を図ることができる。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.経路設定が直線でしか設定できない為、変形圃場では効率のよい作業経路が作れない。協調作業での2台同時作業を行う場合、圃場までの移動を2往復する等、送迎役が必要となる為、離れた圃場の場合、慣行作業よりも時間がかかってしまう。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.自動操舵一式を装備したトラクターを購入するのと同程度の金額で協調型トラクターを購入することができる為、協調作業が出来る分、作業オペレーターにかかる人件費相当分が削減できることを考えると費用対効果は大きくなる。
Q.その他、ホームページ閲覧者に伝えたい事など
A.ロボットトラクターはこれからの労働力不足を補う一つのキーアイテムになると考える。例えば普段一日ではやきれなかった農作業を昼夜問わず行うことができ、休憩中も黙々と作業を進めてくれる等、身体的な疲労の軽減を図ることができ、力強い味方となってくる。また、トラクター操作が不慣れなオペレーターでもトラクターの移動と監視、作業設定の操作を覚えれば、効率の良い作業を行うことが出来る。今後、ロボットトラクターの監視が不要となり、更に効率よく作業を進めることが出来る環境(レベル3)まで整備されることを切に願う。
直進アシスト田植機について
GPS機器・直進アシストを搭載した田植機による移植作業
事例紹介
導入機材:GNSSガイダンス、直進アシスト
技術紹介
田植え圃場の一辺を走行後、基準線に沿ってGPS測位情報による直進走行をアシストし操作不要となる為、直進走行時はオペレーターが運転席から離れ後部での苗補給作業に当たれる事による作業人員の削減と効率化が図れる。
利用者の声
岩見沢市北村 (株)只野農園 (代)只野 貴士
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.運転手も苗つぎの作業ができる為、同乗の助手の作業が半減した。また、植えつけラインの精度が高い為、植え付け後の管理作業や収穫作業が行いやすい。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.圃場の起伏(心土破砕の跡等)でたまに自動操舵が切れる場面がある。また、あらかじめ圃場登録しておくことで最初から植えつけ作業ができる(カラ歩き無し)
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.自動操舵機器はトラクターとの併用使用の為、田植え機単体のアシストよりは経費支出を抑えることができる。また、水稲面積が少ない方や小区画複数圃場だと効果が出ない。最大の効果を求めるのであれば大区画圃場の方がメリットを享受しやすいと考える。
Q.その他、ホームページ閲覧者に伝えたい事など
A.これから1人当たりの耕作面積については増加傾向にあり、維持・拡大していくためには、新たな労働力を確保する必要があり、また作業時間を短縮することで他の作業を行うことが出来るようになるなど、ICT技術は欠かせない技術である。
水管理
自動給排水管理システム
規模拡大が進む大規模経営体にとって大きな労働負担となっている水田の給水・排水をスマートフォンやパソコンでモニタリングしながら、遠隔操作または自動で制御できるシステム。
事例紹介
導入機材:自動給排水管理システム、スマートフォン、PC等
技術紹介
圃場の給水側・排水側に自動給排水管理弁を設置し、スマホで水位を設定、水位計測値によりバルブ等を自動で開閉することにより、水管理労力の軽減やタイマー設定による給水、無駄な排水を軽減し用水を効率的に活用できます。また、Webブラウザ上で圃場の変化をデータで確認することが可能です。
利用者の声
岩見沢市北村 (有)新田農場 (代)新田 慎太郎
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.水廻りをしなくても設定した時間帯に水位をきちんと入水してくれる為、作業時間の短縮が図られた。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.開水路にて使用してるが、設置には加工・水密等必要になる。スマホで状況確認や設定をするが、画面表示の度にログインしなければならない。ひとつの水路から複数の耕作者が取水する場合、使用水量の関係で使用しづらいと思う。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.非常に便利な機器であるが、高額の導入費用が掛る為、注意が必要である。
Q.その他、ホームページ閲覧者に伝えたい事など
A.通いで農業を行っている生産者や耕作圃場が分散している場合は効果を発揮しやすいと思う。
収穫
ロボットコンバインによる収穫作業
GPS機器・自動操舵を搭載した有人自動運転による収穫作業
事例紹介
導入機材名:RTK-GPS、GNSSガイダンス、自動操舵
技術紹介
グレンタンク(収穫物の貯留部)下の収量センサでタンクが満タンになることを予測し、最適なタイミングで事前に登録しておいた排出ポイント(運搬用トラック)付近まで自動走行し、収穫物排出後は刈取り再開ポイントまで自走して自動運転アシストによる刈取りを再開します。
利用者の声
岩見沢市志文町 (株)倉田農場 (代)倉田 真二
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.コンバインでの収穫経験のない方や経験が浅い方でも乗っているだけで作業が出来る為、初心者でも匠の技を行うことができる。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.外周を3周刈り取って次に刈り取る圃場を確定させるが、途中で少しでも衛星情報をロストしてしまうと刈り取り圃場を確定出来ない事象が生じ、回復するまで待つしかない。手動作業に比べると、能率が70%くらいになる。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.コンバインとロボットコンバインの購入価格を比較すると、本体価格よりも12%UPになる。作業能率から考察すると、高額な経費支出となり収入に合わない投資となる。
Q.その他、ホームページ閲覧者に伝えたい事など
A.費用対効果を含めた導入を行っていただきたい。
その他
気象観測機による農業情報(岩見沢市農業気象サービス)
岩見沢市内13カ所に気象観測機器を設置し、50mメッシュ各地点の細かい降水量や気温等様々な情報サービスを提供。
事例紹介
導入機材:スマートフォン、PC等
管内導入実績:74件(R3.7現在)
技術紹介
Web上の地図に自分の圃場位置と栽培する作物情報を登録します。サービス内容は小麦の穂発芽期・出穂期・成熟期・収量の予測、水稲の葉いもち病発生、カメムシ成虫最盛期、玉ねぎの病害予測、乾田直播のための地表面温度と土壌水分量情報の提供などがあります。
利用者の声
岩見沢市北村 (有)濱本農場 (代)濱本 壮男
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.新しい機能がどんどん増えてきており、役立つツール。積算温度を自動計算してくれる機能があり、作業スケジュールを立てる基準として使用している。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.積算温度による生育ステージの予測には、作物ごとに予測に必要な数値をまとめる事が必要になる。各作物の部会や研究会組織、またJA(営農相談部門)で研究していく事が農業気象サービスを上手く利用するために必要だと考えている。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.年額利用料も高くないので加入をお勧めします。
人工衛星画像を使った生育マップの作製(スペースアグリ)
人工衛星画像を、農業者向けに生育マップとして提供します。
事例紹介
導入機材名:スマートフォン、PC等
技術紹介
米国の宇宙ベンチャーが撮影した衛星画像を、農業者向けに生育マップとして提供しており、毎年4月~11月までアクセス可能で、最小3m四方の画像を閲覧でき、作物の収穫時期や生育に応じて肥料の量を変える「可変施肥」などに活用が可能に。
利用者の声
岩見沢市志文町 (株)倉田農場 (代)倉田 真二
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.圃場の生育不良や生育ムラを確認しやすく、可変施肥のブロードキャスターと連動させる事で追肥作業が可能となる。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.水田等は、生育ムラがわかっても追肥作業が困難。土壌分析とあわせてマップとの誤差を考察して施肥するといった工夫を行っている。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.スペースアグリは見るだけの場合、低価格なため、生育ステージごとの生育ムラを確認するだけでも利用価値があり、圃場ごとの収穫順序の目安にもなる。
携帯端末による営農情報の配信(JAコネクト)
今までのJAからの営農に関する情報(営農情報、災害情報、各部門からの連絡等)はFAX連絡もしくはEメールでの連絡が中心となっていたが、アプリ登録することによりスマートフォン、PC等でいつでもどこでも確認できる様に。
事例紹介
管内導入実績:647件(R3.7現在)
技術紹介
FAXの場合は不在時に確認できないことや、Eメールの場合は文章のみで見づらい、PCでしか確認できないなどの問題点がありましたが、アプリを活用することによりスマートフォン、PC等で確認・保存が可能となり外出先でも連絡・確認ができるようになりました。
利用者の声
FAXによる見忘れや外出時の未確認がなくなりました。また、リアルタイムに情報取得でき、図や写真でわかりやすく、通知もポップアップで表示されるので確認漏れがありません。 また、設定メニューにより自分の必要な情報(小麦・大豆のみ等)を選択できて見やすいので非常に便利です。
ドローン活用
産業用マルチローター(ドローン)を活用した農薬散布・肥料散布・播種作業及びマルチスペクトルカメラを搭載したドローンリモートセンシング技術による農作物の生育状況監視。
事例紹介
管内導入実績:ドローン、スマートフォン、PC等
技術紹介
ドローンには、GPS、電子コンパス、加速度センサーなどが搭載されており、電子制御の技術により自律して飛行することが可能です。またラジヘリと比較して機体も小型軽量で機動性も高く、一人でも扱いやすい上に飛行騒音も小さく自分のタイミングで作業できるメリットがあります。また目視では困難な圃場全体の生育状況を、上空からマルチスペクトルカメラにより撮影された生育画像データにて把握できます。
利用者の声
岩見沢市栗沢町 大槻 賢紀
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.飛行高度が低く設定されており、ダウンウォッシュも強く、しっかりと作物に薬剤が付着しているように感じた。従来の産業用ヘリと比べ、オペレーションの面で完全自動化されている事からオペレーターの労働疲労・精神疲労が最小限に抑えられた。また、自律飛行で均一な作業を行うため、作業ムラが少なく、かつ完全自動化のためオペレーターや作業人員を最小限に抑えることが可能となる。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.バッテリーの交換・充電作業頻度の低減と管理・保管の安全性向上に期待したい。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.産業用ヘリと比べイニシャルコスト・ランニングコストが低い分、運営するうえで生産者の負担が少ない。
岩見沢市北村 (株)只野農園 (代)只野 貴士
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.散布作業の適期作業と散布時間の短縮・従来のトラクターでの防除作業と比べて圃場を痛めるリスクが無く、またスポット散布も行いやすい
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.バッテリーの充電・交換作業等、高率的に運用できるシステムを構築したい。また、炎天下でのバッテリー管理に気を付ける(高温になると充電できなくなる)
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.バッテリーの単価が高いため、請け負い散布での賃料をもらう等、新たな作業体系を構築すればバッテリーの増設コストも見合う可能性があるが、個人での運用なら4本~6本で十分だと感じた。また、費用対効果は単年度では良くない為、補助事業等を活用した機体導入に対する助成が必要かもしれない
Q.その他、ホームページ閲覧者に伝えたい事など
A.自動散布は正確&安全に作業できると感じた。初心者でも散布は難しくないと思います。
ハウス自動潅水・換気システム
ハウス園芸施設に制御盤を設置し、自動で潅水・液肥供給やハウス電動巻上げによる温度管理を可能に。
事例紹介
導入機材:ハウス自動潅水・換気システム、スマートフォン、PC等
技術紹介
制御盤の設定により、適切な潅水・液肥供給、温度センサーによりハウスの自動換気ができ、スマートフォン、PC等により潅水履歴のデータ蓄積や遠隔制御が可能に。以前まで手動で行っていた潅水・換気作業を大幅に削減でき適正管理することにより生育の安定を図ることができます。
利用者の声
岩見沢市栗沢町 坂上 健太
Q.導入した機器を使用して感じた良かったところを教えてください。
A.スマートフォン等での遠隔監視・制御により、潅水時間・潅水量の設定してしまえばバルブを止めに行くことなく管理できる。換気に関してもハウス内温度設定をしておけば自動で巻上げ作業を行ってくれるので、身体的にも精神的にも負担軽減されている。
Q.導入した機器を使用して感じた、改善点・課題・工夫等を教えてください。
A.天候の変化(雨、強風当)があった場合、手動管理となる為、完全自動化を目指すなら雨、風向・風量センサーが必要と感じた。工夫点としては未導入ハウスのハウス開閉度合いを自動換気導入ハウスの開閉具合をみて参考にする事ができた。
Q.初期導入経費並びに運用費用考えた場合、費用対効果を教えて下さい。
A.経営規模拡大等によるハウス増棟を考えた場合、より省力化の効果があると感じた。
Q.その他、ホームページ閲覧者に伝えたい事など
A.日々のハウス管理作業に占める潅水・換気作業時間は短時間ではあるが、天候を気にかけている時間は長時間となる為、自動潅水・換気システムを導入する事により心労軽減と外出が可能となります。
利用者の声について
岩見沢市内における生産者が自らICT機器を使用し感じた生の声を纏めたものです。
ICT機器を導入するにあたり1番の課題点は導入することによる費用対効果が見える化されていない点でありますが、現在においては様々な実証事業を通じてICT機器の優位性が示されています。
当研究会の目的は「生産者自らが実証や普及展開に関する取組みを推進するため」に組織された研究会であり、今後もメーカーに対しまして改良等の要望を伝えながら、様々な実証事業への参加やICT機器に関する情報には常にアンテナを張りながら情報収集を行い、更なる普及拡大を推進していきたいと考えております。